講座

第5回 「世界遺産所有者が語る明日の京都」講座

演題  : 世界遺産二条城を守る。伝える。
講師  : 京都市長 門川 大作 氏
開催日 : 平成24年11月3日
場 所 : 元離宮二条城 台所
 
IMG_0645二条城には3,000枚もの障壁画(襖絵)が残っています。その内、重要文化財の狩野派の襖絵が1,016枚。それ以外にも杉戸絵や天井画などが2,000枚。文部省の概念では、襖絵は独立したものと捉えられ、重要文化財となりますが、国宝の建物の天井画などは、国宝の建物の一部とみなされます。よって、国宝の建物内の天井画などは、全て国宝であり、二条城内の襖絵、天井画は全て国宝か、重要文化財となります。
このような障壁画が残っているだけでもすごいことですが、それを維持管理していくのは大変なことです。二条城を維持管理する上での苦労は大きく2つあります。
 
1つは、「人を育てる」ということ。ヨーロッパの石の文化と違い、日本の有形の文化財は必ず朽ちていきます。これを補修する際に、同じ材料、同じ技術で再現する、これを守れたら文化遺産なのです。これを維持するのは難しいですが、それ以上に難しいのは、何が尊いか、何が大切か、何が美しいか、というこの考え方を維持していくことです。京都市は、昭和47年から襖絵の模写を行っています。京都市立芸術大学に、模写を学ぶ学科を創り、模写をする芸術家を育て続けています。その芸術家が、模写をしています。二の丸御殿の1,016枚のうち3分の2が終了しました。あと20数年かかるでしょう。二条城以外にも京都や日本中の寺社、民家には襖絵があり、芸術家を育て続けなければ、襖絵はいつか朽ちていきます。補修も同様です。また、襖絵だけでなく、桧皮葺の葺き替えなどにもいえることです。芸術家を育てることは、今を生きる私たちの責任であると考えています。
 
もう1つは、これまで日本の文化財の保護行政は、点で保全していましたが、世界遺産の考え方により、点から面での保全、すなわち「バッファゾーン」という考え方がうまれたことです。国への呼びかけにより、景観法が制定され、京都市では次の5つの景観政策が制定されました。
1. 京都市内の中心部の高さは、45mから31m、そして15mに規制
2.建物は、37の地域に分け、デザイン、色を規制
3.眺望景観(日本で初めての概念)
4.借景
5.看板の規制強化
特に、看板の規制については、再来年8月31までに京都市内の屋上看板を全て撤去することを決定し、推進しています。
 
価値も守り方も全国一律ではありません。京都市では町家が次々と失われている現状を踏まえ、相続税の免除、町家として維持していく間の猶予などを国に要請していますが、これについては、引き続き要請していきます。
 
現在二条城では、1603年の築城以来の大修理が行われています。毎年の入場料収入が7億円、年間の維持管理費が7億円超、そして、この大修理には、約100億円の費用を要します。ぜひ一口城主募金をお願いしたいと思います。
 
二条城は地域と共に守っていかなければならないものであり、市民の活動にどんどん生かしていきたいと考えています。開かれたものにしていかなければ朽ちてしまう。大切にしながらも、生かしていきたいのです。そして、何よりも大切なことは、京都に繋がる日本の文化を、次の世代に、世界に発信することです。

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