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Vol.2 文化財建造物と京都のまちの火災安全

更新日:2013年10月29日

2013年4月現在、わが国で重要文化財に指定される全2,386の建造物のうち206(8.6%)が、また、国宝に指定される全217の建造物のうち40(18.4%)が京都市内にあります。この他にも、国の登録、府市の指定を受けるもの、また未指定ながらも価値の高い文化財が数多くあり、その集積状況は他の都市と比較して際立っています。これらの文化財建造物は、京都のまちを特徴づける重要な要素となっています。しかしその一方で、文化財建造物の多くが木造であり、これらを火災被害から守って保全を図るには特別な配慮が必要です。この点、多くの文化財建造物の周辺には、既に散水設備や貯水槽が整備されている上、消火訓練も定期的に実施されているので、万全の体制で守られているように見えます。しかし、果たしてそうなのでしょうか。

京都には、建築年数の経過した木造建物が密集する、いわゆる木造密集市街地と呼ばれる市街地が広範囲に存在しています。こうした市街地では、個々の建物の防火性能が必ずしも高くなく、また建物同士の間隔が狭いため、いずれかの建物で火災が発生すれば、多数の建物が同時に燃える市街地火災へと発展し、大規模な被害が発生する危険性を抱えています。通常、こうした木造密集市街地で火災が発生したとしても、すぐに消防隊が駆けつけることが可能なため、未然に火災の拡大を防ぐことができます。しかし地震時にあっては、同時に複数の火災が発生する上、建物の倒壊によって道路が閉塞する可能性も高いことから、平常時のように円滑な消火活動を期待することはできません。
 
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京都の文化財建造物は、人里離れた山の中にあるわけではなく、その多くが木造密集市街地の中に立地しています。このため、文化財建造物の火災安全を考える場合には、敷地内で発生する火災だけでなく、むしろ地震時などに周辺の市街地で発生し、規模を拡大しながら迫ってくる市街地火災への対策を講じておく必要があります。現在、文化財建造物の周辺には散水設備や貯水槽が整備されるなどの対策が講じられていますが、これらの対策であっても、市街地火災の勢いを止めることは容易ではありません。文化財建造物を火災の被害から守るには、市街地の側で火災を発生させない、仮に発生したとしても大規模化させないような仕組みが必要です。こうした仕組み作りは、まちそのものの安全性を高めることに他ならず、文化財建造物だけでなく、人や財産を守ることにもつながるものです。文化財建造物の火災安全は、周辺地域と連携しながら、地域におけるまちづくりの一環として考えていく必要があります。

樋本 圭佑(ひもと・けいすけ)
京都大学防災研究所 助教 博士(工学)

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