平成27年10月18日、第5回 フォーラム 「日本の美 手と技の世界」を開催し、450名が参加しました。
基調講演は熊倉 功夫氏(静岡文化芸術大学学長)。
「和食」が2013年にユネスコの無形文化遺産として登録されました。
和食文化の特徴は「いただきます、ごちそうさま」に表れる自然の恵みに対する感謝であり、お正月に家族皆でおせち料理をいただく習慣は神々と飲食することを意味する文化の原点です。
和食の歴史は絵巻物に描かれていることからも平安時代まで遡り、室町時代には本膳料理、江戸時代には茶懐石が誕生しました。殊に茶懐石は出来たてを順に提供することが特徴であり、作る人と食べる人の間に心遣いや思いやりが感じられ、家庭料理が原点になっていると考えられます。しかし、現在は伝統的食文化の衰退や国内生産能力の低下など日本の食文化が危機的状況に陥っていることも事実です。
無形文化遺産への登録はゴールではなくスタートであり、これから和食をどのように保護・継承していくかが大きな課題となります、と述べられました。
パネルトークでは髙橋英一氏(瓢亭・十四代当主)より、日本料理に欠かせない包丁は、用途に応じて数多くの種類があり、それらを使いこなし美しく仕上げる料理人の技術や、絶妙に研磨する技術も世界に誇れる伝統文化、誇りでもある、と述べられました。
市田ひろみ氏(服飾研究家)からは、着物の仕立てにはそれぞれ専門の職人によって20以上もの工程があります。和服を無形文化遺産申請する一つのポイントにこのような複雑な分業をどうアピールしていくかが和服を無形文化遺産申請する一つのポイントとなり、課題でもあります。また、お宮参り、七五三、十三参り、成人式、結婚式、お葬式といった節目に着るものを正し儀式をする日本独自の習慣に着目し、こういった通過儀礼を継承する意味でも、和服との関係性が重要ではないでしょうか、と述べられました。
髙木聖雨氏(書家)からは、「仮名」がなければ「源氏物語」や「土佐日記」など日本文学の始祖も生まれなかったでしょう。仮名文字は流麗で美しい造形であることからも、日本特有の優美な書法「仮名書道」に焦点を当て、ユネスコの無形文化遺産登録申請に向けて取り組んでいることが紹介されました。
最後に村井副会長が「大陸文化を摂取して作られた和風文化の継承が課題である」と纏められ第5回フォーラムの閉会挨拶とされました。